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川の詩 (Poem Of The River)

音楽、映画、本といったカルチャーから些細な日常までをその日の気分で何となく

無機質で有機的で無機的と言う、非常に面倒くさいバンドによる中期屈指の名曲は、密室感がクセになるねえ

”Other Moments” by Wire

From The Album "Manscape"

Life in the Manscape

 


Wire Other Moments - YouTube

 

イギリスでパンクの嵐が吹き荒れたすぐ後に、ロンドンから出現した4人組バンド、Wire。コリン・ニューマン、グラハム・ルイス、ブルース・ギルバート、ロバート・ゴートゥベッドにより結成。当時彼らは20代そこそこだった。

 

パンク、特にセックス・ピストルズからの影響でそれまで触ったことも無い楽器を手にしてたどたどしくも自由にアグレッシヴに演奏をはじめた後発のパンクやポスト・パンクのバンド群の面々は、色んな形で自由に自身のサウンドを鳴らしていった。

 

そんな個性的なバンドが限りなく多いポスト・パンク期のバンドの中でも、かなり異質な個性を持ったバンドがWireだった。彼らは「ロックでなければ何でもいい」「音楽よりもノイズに興味があるノイズ・ワーカー」とか嘯きながら、独自のサウンドをクリエイトしていった。殆ど楽器演奏が出来ない状態で、荒削りを超えた稚拙な演奏。しかし、それに余りある大胆な発想と、常識を逸脱した自由度の高い表現と様々な実験によってサウンドを具現化していったのだ。初期にEMIから"Pink Flag"、"Chairs Missing"、"154"という3枚のアルバムを残して1980年に活動を休止している。

 

Wireと言えば初期の3作と言う人が多い。確かに革新的でアーティスティックで稚拙なサウンドのインパクトは凄いって事は否定しないし、実際好きな作品群ではある。しかし、僕としては活動休止以降の彼らの作品に魅力を感じる。

 

活動を休止した5年間をソロ・ワークや芸術活動で思い思いに過ごした後の1985年にバンドは再結集、翌年に"Snakedrill EP"で完全復活を果たす。7年振りにリリースしたアルバム"The Ideal Copy"は、エレクトロニクスを多用したダンサブルなアプローチであり、賛否両論を巻き起こしたが、これは彼らの5年間のソロ・ワークの結晶とも言える作品でもあったのだから、これを批判するのは野暮って言うものだ。好きかどうかは別として...。

 

それ以降も、デジタル・テクノロジーを多用したサウンド・アプローチで作品を発表する。そのサウンドは、デジタルでポップでメロディアスでさえある。しかし、その裏にはバンドでレコーディングしたサウンドを解体して抜き差ししてノイズの断片の再構築を繰り返して仕上げ、サウンドの密度を高めるといった異常に面倒くさいアプローチを行っている。その作業によって、ポップでメロディアスでありながら、ひんやりとした密室感と閉塞感がある。そこがタマラナイのだ。

 

今回取り上げた曲は、そんな再結成後Wireの中でも一番好きなアルバムと言っていい”Manscape”に収録されている。Wire史上、最もポップな作品と称する人もいる。確かに間違いではない。が、このデジタルでカラフルなポップ・サウンドと、より一層冷やかになった閉塞感が、逆にリアルに感じる。サウンド云々よりも、この空気感が息が詰まる程にリアルだ。無機質でありながら有機的に作られ、でも聴感は無機質。実にやっかいな曲を好きになったものだ。歌詞も抽象的なものが多い彼らだが、この曲の歌詞にはいつもグッとくるのだなあ。

 

ショウビズ界に背を向けながら老獪にリスナーの期待をすり抜け、いい意味で裏切りながら期待以上の作品を作り出す、掴みどころの無い展開の活動を行うこのバンド、僕にとってはいつも雲の上の人達なんだ。

 

Pink Flag

Pink Flag

 
154

154

 
Chairs Missing (Dig)

Chairs Missing (Dig)

 
The Ideal Copy

The Ideal Copy

 
A Bell Is a Cup Until It Is Struck

A Bell Is a Cup Until It Is Struck

 
Manscape

Manscape

 
The Drill

The Drill

 

 

中島哲也&役所広司で、あの極悪バイオレンスが止まらない劇薬原作をどう料理したのか?

第3回「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた、深町秋生のオリジナル長編処女作『果てしなき渇き』は、僕みたいな一般ピープルにとっては、ひどく居心地が悪く、(肉体的にも精神的にも)痛くて、何でこれを読まなきゃいけないんだ!とブツブツ言いながらも、幾多の小説群よりもハイペースで読んでしまった作品(ツマラナイから飛ばし飛ばし読んでいたのではない)。読後には、ドツボにイヤーな気持ちになってしまうという、アンダーグラウンドにしておきたい作品で、ちょっと人にはススメづらいものだった。だけど25万部のベストセラーになったので、古本で買った人を含めるとそれを上回る人々が読んでいるんだよね。

 

果てしなき渇き (宝島社文庫)

 

映画化は不可能だろう...と思っていたら、見事に実現してしまった。もし出来るとしたら、キタナイ部分をカットして、藤島父をヒーローっぽくして、最後には美談にして...ってユルーい感じになるのかなあ、と思ったら、中島哲也監督だってんで、観ないって訳にもいかず、恐る恐る鑑賞しました。

 

『渇き。』(2014年・日本映画)

監督:中島哲也
脚本:中島哲也、門間宣裕、唯野未歩子
出演:役所広司小松菜奈、清水尋也、妻夫木聡オダギリジョー高杉真宙二階堂ふみ橋本愛中谷美紀...他

渇き。STORY BOOK

 

R15+(15歳未満は鑑賞も入場もダメ、ゼッタイ)です。クスリと未成年の性にまみれた原作を忠実に映像化したらR18+だろうなあ...と思いつつ、一体どんなんなちゃてんのかなあと思いつつ...。

 

<あらすじ的なもの>

元々は刑事だったが、妻の浮気相手に傷害を負わせて懲戒免職となった警備員の藤島は、妻と娘との幸せだった家庭を失い、虚ろに生きていた。ある日コンビニでの大量殺人事件の第1発見者となる。同じ頃、元妻から娘の加奈子が行方不明になっている事を聞かされ、部屋を捜索したところ、覚醒剤を発見する。単独で娘の行方を探し始める藤島だったが、彼女の足取りを追ううち、彼が知らなかった彼女の裏の顔を知る事になる。そして核心に迫るにつれ、巨大組織がらみの犯罪を知る事となり、自身も巻き込まれていく...。

 

・感情移入出来るキャラがいない?

感情移入出来る人物が一人もいない、イイ奴なんて皆無!な原作同様に、映画の方も暴力、恫喝、理不尽、変態、キタナイ、クサイ、ヒドイ、ジャンキー、バカな人たちのオンパレード!サブキャラの人たちなんて、どうしようもないヤツラばっか。世も末だ、という刹那感が漂う。

 

・原作で強烈だった藤島秋弘(映画では昭和)の役所広司が凄い!

娘の居所を探し続け、関係した人々を暴力と暴言で脅しまくる役所広司演じる藤島父のサイテーなキャラは凄い。殴られても撃たれても倒れず、どんなに血ヘドを吐いても、すぐに次の行動を起こす。何でそこまで人間がキライかなあ、ってほどに悪態をつきまくる。そして行動が全て裏目に出てしまう。コンビニの殺人現場に居合わせたのは偶然としても、以降は自分の行動が元でドツボにハマってしまう。その様が滑稽にすら思えてしまう。いつ殺られてもおかしくないが、彼は立ち上がる。生きているかも死んでいるかも知れない娘を助けるために...と思ったら大間違い。その辺はラストの彼の叫びに集約されているのだ。

 

・やはり中島哲也作品には破壊力がある。でもしっかりエンタメ!

改めて、中島哲也監督の手腕に唸るしかない。2時間超えだが、飽きさせる事はない。相変わらずスピード感のある展開に乗っかるまでのタイミング取りが難しいが、乗ってしまえば、あとは常にハイテンションな展開に一気にラストまで行ける。暴力シーンは意外とポップに作られているし、何箇所かしか痛いシーンは出てこない。でもまさか、藤島の理不尽な婦女暴行は、ほぼ原作に忠実だ。オッサン、逆恨みか知らんが、やり過ぎだよ!

 

・原作との相違でちょっとしたナゾと、ホッとした部分も

ちょっとだけナゾな部分としては、原作になかった『不思議の国のアリス』のくだりである。何か意図があったのだろうか?あと、実業家チョウの扱いがあまりにも少なくなっていて、サクッと出てきてサクッと...。原作でもさほど多い出番は無いが、不愉快極まりなかったキャラだけに、ちょっと不思議。しかし、そのためか原作で一番不愉快な箇所、チョウのビデオテープのくだりが無かったので、これには少々ホッとした。ビデオの中身もそうだが、それを見て藤島が...って所は映画にしちゃあマズそう。この映画の唯一の救いでした。

 

・これを見て何故か元気になっちゃうのはおかしいのか?

とにかくエネルギッシュでバイオレンスで極悪な人々による極悪な映画。しかし、何故かこういった作品を観た後には元気が出てしまう。おかしい感情だろうか。所詮僕はフツーの人間、自分よりもサイテーな人を観て、自分の生活も捨てたもんじゃないと思うのだろうか。不幸な境遇人と自分を比較して、「まだマシじゃん」と感じるのと変わらんし、ドロドロの昼ドラを笑いながら観てるのと変わりないじゃん。僕こそがサイテーなんじゃないの。

 

・豪華なキャストがサイテーなキャラの競演!

豪華出演者が、サイテーなキャラの面々を演じている。直線的なオダジョーよりも、ヘラヘラ笑いながらサイテーな妻夫木がイイなあ。車に轢かれちゃったけど、大丈夫だったかなあ...。女子陣は及第点だらけで、突き抜けた人はイナイ。絶賛されている加奈子役の新人小松菜奈ですが、個人的にはそんなにいいかあ?って感じ。少なくとも、加奈子のイメージでは全く無かったです。あ、小松さん本人がどうって事ではなく、あくまでも加奈子としてはって事です。悪しからず。

 

・結局観るべきなのか?

そりゃ、原作時点で気持ちの良いものではなので、原作同様に他人に胸を張ってオススメ!とは言いづらいのですが、このサイテーなパワーとバイオレンスの嵐には圧倒されます。是非体験してもらいたいとは思いますが、ラストにカタルシスが無いのもまた事実だし、後味も決して良くない。心して観賞しましょう。

 

果てしなき渇き

果てしなき渇き

 
渇き。STORY BOOK

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アロノフスキー流の創世記は、宗教映画か、SFスペクタクルか、壮大な人間ドラマか?

先月の公開から、観よう観ようと思っていたが、ナゼか後回しにしてしまっていた映画をやっと観る事が出来た。

『ノア 約束の舟(Noah)』(2014年・アメリカ映画)
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー 、 アリ・ハンデル 
音楽:クリント・マンセル 
キャスト:ラッセル・クロウジェニファー・コネリーレイ・ウィンストンエマ・ワトソンアンソニー・ホプキンスローガン・ラーマン、ダグラス・ブース他

 

ポスター A4 パターンB ノア 約束の舟 光沢プリント

 

ブラック・スワン』『レスラー』のダーレン・アロノフスキー(個人的には『レクイエム・フォー・ドリーム』の、と言いたい)が監督した最新作である。何と、旧約聖書の「ノアの方舟」伝説を、ラッセル・クロウ主演で描いた壮大なスケール映像によるアクション超大作ってなフレコミだ。アロノフスキーが聖書の世界を壮大に描く一大叙情詩...というのが、どうしても解せないという事で、ちょっと様子見していた次第。やっと観てきました。 

 

<あらすじ的なもの>

天地創造の後、アダムとイヴの罪から生まれた長男のカインの子孫の人類は、カインが犯した兄弟の殺害という罪を背負いながら、子孫を増やし続けていた。一方、3男の子孫であるノア(ラッセル・クロウ)は、妻のナーム(ジェニファー・コネリー)と、3人の息子たちと隠れるように暮らしていた。ある日、彼は夢を見る。神が、生あるものを振るいにかける為に大洪水を起こすというものであり、それを神のお告げと悟った彼は、家族と堕天使と共に巨大な箱舟を造る。そして全ての種類の動物のつがいを乗せる。果たして大雨による大洪水が発生し、世界は水の中に埋没してしまうのだが...。

 

この作品は壮大なスペクタクルとして観てしまうと、アロノフスキー作品である事を忘れてしまい、単なる娯楽映画となってしまいそうだったので、旧約聖書の世界を確認しつつ、ちょっと比較検討するという観点で観てみた。

 

旧約聖書より)

<創世記>   

天と地を創造した全能の神は、全ての生き物を統治する存在として、土の塵で人類最初の一人アダムを生み出し、その分身であるイブを作り出した。彼らを楽園=エデンに住まわせた神は、地の樹木の実や植物などを自由にする事を許可したが、唯一「知恵の木」だけは、これを禁じた。これは神が与えた試練だったが、蛇の誘惑に乗ってしまったイブは、アダムと共にこの木の実を食べてしまう。禁断の実を食べてしまった罪を犯したアダムとイブは、その罰としてアダムは食物を得るための苦しみと、命が尽きた後は土に還る事、イブは産みの苦しみと男に支配される事を課せられる。ふたりの間には長男のカインと弟アベルが生まれる。

 

<カインとアベル> 

成長していった彼らは、カインは羊飼いとして、アベルは農夫として生活した。ある日、神に正しいものとされたアベルに嫉妬したカインがアベルを殺してしまう。罪を犯したカインは、エデンから追放される。流浪の生活の末にカインは子孫を増やし、自分たちに楽園を築く。

 

<アダムの子孫>

神に正しいと認められるべきアベルがカインに殺されたため、神はアダムと、次の妻との間に子供を授けた。これがセトであり、その子孫がメトシェラ、レメク、そしてノアだった。ノアは、息子たちセム、ハム、ヤフェトをもうけた。

 

この天地創造の物語は、映画の序盤に旧約聖書に忠実に語られるのみで、映画のストーリーには登場しない。ノアの祖父であるメトシェラはアンソニー・ホプキンスによって演じられた人物。ノアの父レメクは、マートン・チーカショが演じている。

 

旧約聖書より)

ノアの方舟

そして、人は増えていった。地上には人の悪が増した。主は地上に人を造ったことを後悔し、自身が創造した人、家畜、鳥を大洪水によって滅ぼそうとする。しかしセトの子孫であり、「救い」と名付けられたノアは、神に従う無垢な人として、啓示を受ける。それは、大洪水の前に箱舟を造り、妻子や嫁たちと共に方舟に入る事、そしてすべての命あるものを、雄と雌のつがいで方舟に乗せて生き延びさせる事だった。

 

清い動物を七つがい、清くない動物を一つがい、鳥を七つがいを方舟に収めた。ノア、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。ここで方舟への扉は主によって閉ざされた。そして、洪水が地上に起こった。地上ににいた生き物はすべて、滅ぼされ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。

 

映画では、清い動物と清くない動物という事は無く、全ての動物を一つがいずつ集めたという事になっていた。動物愛護に偏重しているという指摘が正しいか。また、嫁がいるのはノアとセムだけになっており、人間の数が足りない。これは思春期のハムの複雑な心と行動を描くための布石であろうか。しかし、方舟を造る過程では、ウォッチャーという岩の巨人(実際は堕天使らしい)が大活躍して、いとも簡単に出来てしまうので、少々肩透かしを食う。ここでカタルシスを得る様なストーリーでは無いという意図は汲めるが、実際には家族だけで造ったので、100年以上もかかったことを考えると...。ウォッチャーの存在で一気にSFスペクタクルになってしまうのが、ちと残念か。

 

旧約聖書より)

 

神は、ノアと動物たちの事を気に留め、風を吹かせたために水が減り、天の窓が閉じたため雨はやみ、水は地上から水が減っていき、箱舟はアララト山の上に止まった。

ノアは烏を放したが、地上は乾いていなかったので、戻ってきた。次に鳩を放したが、止まる所を見つけられずに帰って来た。更に七日待って、彼は再び鳩を方舟から放した。戻ってきた鳩は、くちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。

 

ここらへんのくだりは全くもって旧約聖書の内容に忠実だった。しかし、堕落した人間の象徴としてトバル・カイン(レイ・ウィンストン)が登場したり、彼が容易く方舟に乗り込み、ハムを手なずけてノアを襲おうとするのも完全オリジナルだと思われる。肉を食らうのは悪の象徴であるトバル・カインだけ。菜食主義者のアロノフスキーらしい表現と言える。

 

旧約聖書より)

 

地上はすっかり乾いた。そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。ノアは農夫となり葡萄畑をつくった。ある日、ノアが葡萄酒を飲んで酔っ払い、裸で眠ってしまった。それを見つけたハムは、彼を馬鹿にしたが、セムとヤフェトは父親に服を着せた。目を覚まして事情を知ったノアは、ハムとその子供に呪いをかけた。

 

ラストのくだりに関係があるこの部分は、あまり詳細にするのは避けるが、ノアとハムの親子関係の実際と、生まれ来る子供たちへのノアの考え方や苦悩は、完全に映画オリジナルである。何故この様な脚本に至ったかは、個人的にはまだ解決していない。何でなんでしょ?

 

とは言え、結構なウェイトで聖書を骨子に組み立てられた脚本だし、方舟のヴィジュアルは、サイズや形に至るまで聖書の記述に極力忠実に造り上げたとの事。その執念たるや凄いが、アロノフスキー作品としては個人的には食い足りない。宗教や動物愛護といった事柄の扱いの難しさに、アロノフスキーも負けてしまったか。あえてタブーに挑むにはあまりにも大きな問題を題材にしてしまったからか。

 

出演俳優としては、苦悩するノアを演じたラッセル・クロウの迫力は壮絶なものがあるが、若手俳優の魅力も捨てがたい。イラを演じるエマ・ワトソンは相変わらず魅力的。少女から、強い母親に至るまでの女性をを見事に演じている。既に『ハリー・ポッター』の冠言葉は必要ない。最新作はアレハンドロ・アメナーバル監督(『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』『海を飛ぶ夢』など)による『Regression(原題)』。そのエマとは『ウォールフラワー』で共演したローガン・ラーマンも存在感を発揮している。

 

最近は恋愛映画でアラフォー女性を演じる事の多いジェニファー・コネリーが、ノアの妻ナームを渋く演じているのもいいなあ。アロノフスキー作品は『レクイエム・フォー・ドリーム』以来となるが、アロノフスキーは彼女の活かし方が上手いのでは?『フェノミナ』や『ラビリンス』の頃は15歳かあ!現在43歳。まだまだ渋みを増した演技を期待したい。次作となる、ペルーのクラウディア・リョサ監督(『悲しみのミルク』など)の5年振りの作品『Aloft(原題)』では、主役に抜擢された。楽しみ!

 

 

イオンシネマ「シネパス」で夢の2本立てを名画座並みのプライスで観た!でも運営方法にはちょっとギモン。

昨日、イオンシネマ釧路にて2本の名作を立て続けに観た。

 

『エイリアン(Alien)』(1979年・アメリカ映画)

監督:リドリー・スコット

脚本:ダン・オバノン

音楽:ジェリー・ゴールドスミス

出演:トム・スケリットシガニー・ウィーバー、ヴェロニカ・カートライト、ハリー・ディーン・スタントンジョン・ハートイアン・ホルムヤフェット・コットー

 

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詳しい内容は今更感があるので端折るが、そういや、久々に観た「Kill Me...」のシーンや、マザーとの画面上の対話シーン等を含む、非ディレクターズカット版を劇場のスクリーンで観られるのは感慨深い。

 

先程公開になった『ホドロフスキーのDUNE』で詳しく語れらる、ホドロフスキー版『デューン』の製作中止騒動が無ければ、ダン・オバノンH.R.ギーガーといった、今作のスタッフが集まる事は無かった...。また、いよいよエピソード7を製作中の『スター・ウォーズ』が大ヒットして無ければ、そもそも本作は生まれていないハズで、何だか最近の出来事とリンクして因縁めいてて面白いなあ、何て思ったりして。しかし、その『ホドロフスキーのDUNE』は北海道では遅れて8月公開らしい。凄く残念...。

 

猿の惑星(Planet Of The Apes)』(1968年・アメリカ映画)

監督:フランクリン・J・シャフナー
脚本:マイケル・ウィルソン、ロッド・サーリング
原作:ピエール・ブール
出演:チャールトン・ヘストンロディ・マクドウォール、キム・ハンター他

 

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こちらも今更感のため内容は割愛。そういえば、今年『猿の惑星:新世紀』が公開される。前作『猿の惑星:創生記』から10年後の話らしいが、ジェームス・フランコは出ないらしいし、監督は交代してるし、一体どうなんでしょう。ま、間違いなく観るけどね。こちらもちょっとタイムリーだった。

 

それよりも、若かりし頃に池袋名画座で2本立てで旧作の名作を観まくった時代を思い出させる奇跡の2本立て(今回は2本分の料金ですが)を彷彿とさせる凄い濃密な4時間余でした。名画座時代の一番思い出深い濃密な組み合わせは、お馴染み池袋で観た『未来世紀ブラジル』x『ハイランダー』かなあ。終わった時にはもうフラフラだった。いい意味でね。あ、『未来世紀ブラジル』は来週からやるらしい。何か因縁だなあ。

 

http://www.flickr.com/photos/11121568@N06/3405608142

photo by Alan Cleaver

 

さて、そんな素晴らしい企画(?)、イオンシネマさんのリバイバル名画をデジタル上映するシリーズ「シネパス~名作映画の旅に出よう。」についてちょっと書きます。

 

[そもそも、シネパスとは?]

毎月1つのテーマにもとづきハリウッド往年の名画から新たな日本の傑作まで4作品を厳選。
月ごとにテーマはかわり、1年間で全12テーマ・計48作品を平日のスクリーンにて上映いたします。
すべて高品質のデジタルシステムで上映。

全国のイオンシネマ指定館で2014年4月7日~2015年3月20日まで実施中。

 

基本線はそんな感じ。年間パスで9,800円、月パスで1,200円、最近発売された3ヶ月パスで3,000円である。見放題って誤解している人がいるけど、基本的には月当たり4作まで、つまり1作1回までの観賞が可能だ。月パス買って1カ月に公開される4本とも観て1本300円!こりゃ凄い。

 

詳細は↓

シネパス|イベント&サービス|イオンシネマ

 

そりゃ文句言い出したらキリが無いが、ラインナップは絶妙だ。某午前中から始まる例のアレに比較すると、レベルが違う良質なセレクト。

 

アッチはハリウッド大作の「名画」にあまりにもコダワリすぎてツマラナいセレクション。過去にタワー...いや、名作高層ビル火災ディザスター映画を観たんだが、デジタル処理のお粗末さに困惑した経験があり、こんなんじゃスクリーンで観る意味は無いなあ、と悟ってから全く観なくなった。

 

シネパスの方は、デジタル処理がバッチリだし、劇場内で3番目に大きいスクリーン(キャパ230人の規模!)で観られるって事は凄い。正に奇跡的である。

 

しかし、運営方法に関してはかなりギモンの嵐。だって、キャパの100分の1程度...つまり、2~3人程度しか入っていない観客の数。朝一だから?いやいや、この1回だけです。平日だからじゃあ?いやいや、平日しかやってません!一体何でこんな放映時間なのだろう。何か特別な理由か大人の事情でもあるのかいな。

 

現状の自分の立場だから観に行ったが、フツーの人は観にいけないだろう。この間までの僕だってそうだ。釧路まで車で2時間かけてってのはまあいいとして(だって普段から札幌まで4時間かけて映画観に行ってるし。それよりマシ。)、平日の朝一に行ける訳ないだろ!

 

イオンシネマさんは、映画ファンの生態を今一度検討し直してから、この企画を再度練り直すべきだと思う。早起きはキツイし、皆がイオンシネマの近所に住んでるわけじゃないし、そもそも大半が平日は休みじゃないもの。この素晴らしい企画が今年限りになってしまいそうで怖い。作品のセレクトは、まずまず良いのだから。ま、往年の名画座の様な、グーグー寝てるオッサンや、仕事をサボってるサラリーマンと、ごく一部の映画バガヤロ男(僕の様な、ね)が共存しているスペースを再現したいだけなら、決して止めませんが...。

 

 

 

 

 

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 ポール・ハギスお得意の群像劇かと思ったら裏切られる、決して交わるはずのない人間達の物語。愛と絶望と癒しのミステリー。

「サード・パーソン (Third Person)」(2014年アメリカ映画)

監督・脚本:ポール・ハギス

主演:リーアム・ニーソンミラ・クニスエイドリアン・ブロディ、ジェームス・フランコオリヴィア・ワイルドキム・ベイシンガー、モラン・アティアス他

 

ポスター A4 パターンB サード・パーソン 光沢プリント

 

クリント・イーストウッド監督”ミリオン・ダラー・ベイビー”と、自身が監督した”クラッシュ”で、2年連続アカデミー脚本賞を受賞したポール・ハギスが監督・脚本を担当した新作映画「サード・パーソン」をディノス・シネマズ札幌劇場にて鑑賞してきた。

 

<あらすじ的なもの>

パリ。ホテルに滞在して作品を執筆するマイケル(リーアム・ニーソン)。かつてピュリッツァー賞を受賞した作家だが、その頃の勢いある文筆は失われていた。彼には妻がいるが、愛人のアンナ(オリヴィア・ワイルド)を同じホテルに滞在させていた。ローマ。アメリカ人のスコット(エイドリアン・ブロディ)が、たまたま立ち寄ったバーで出会った美女と関わり、地下世界へと足を踏み入てしまう。ニューヨーク。元女優であるが、現在はアルバイトでその日の暮らしもままならない生活を送るジュリア(ミラ・クニス)が、画家である元夫(ジェームズ・フランコ)と、息子の親権を争う。

 

 ポール・ハギスと言えば、本作同様に自身が監督・脚本・原案を担当した傑作群像劇『クラッシュ(2004年)』を思い出す。ひとつの交通事故をきっかけに、交わるはずの無かった境遇も人種も異なる人々の人間関係を描いた名作中の名作だ。未鑑賞であれば、間違いなく2回以上観るべき作品だ。きっとハギス・ワールドに魅了される事だろう。

 

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『クラッシュ(2004年)』

 

今作も『クラッシュ』同様の群像劇と思っていたら、見事に裏切られた。今作の登場人物達の物語は、パリ、ローマ、ニューヨークでそれぞれ起こる。その時系列は同じと思われるので、彼らが交わる事は物理的にあり得ない。が、彼らの出来事は、直接的では無く、あくまでも間接的に関わっているように見える。ここに、ハギスの罠があるので、注意して観ておきたい。この作品にどんでん返しを期待するのは野暮というものだ。それぞれに境遇の異なる3組の男女の、愛と信頼と裏切りと絶望と希望を描き出し、そして、何らかの形でそれらは収束する。その核心に関しては、ネタバレになるので、ここでは触れない。

 

映画のタイトルは「3人称」若しくは「第3者」という意味でいいのだろうか。これはどういう意味かというのは本編のラストのプロットを観ると明らかになるのだろう。主人公のマイケルは、ハギス監督自身の姿を投影していると思われる。彼は、この散らばったエピソードを、見事に収束させる。今作には、難しい謎解きはない。途中で気づいてしまう人もいるだろう。でも、過去のハギス作品と同様に、観終わった後の余韻が非常に深みのあるものだった。

 

くたびれた作家マイケルを演じたのは『シンドラーのリスト』のオスカー・シンドラーや、『スター・ウォーズ・エピソードⅠ』のクワイ・ガン・ジン、個人的には一番印象深い作品『マイケル・コリンズ』の主人公を演じ、最近は『96時間』のお父ちゃんで知られるリーアム・ニーソン。その愛人アンナを演じたのはオリヴィア・ワイルド。テレビドラマ『Dr.House』のレミー役で有名で、最近では『ラッシュ/プライドと友情』や『Her/世界でひとつの彼女』で、主役ではないが存在感を放つミステリアスな女優。

 

仕事で出張先のローマに滞在するアメリカ人ビジネスマンを演じるのはロマン・ポランスキー監督『戦場のピアニスト』から『エイリアンvsプレデター』まで、幅広く演じるエイドリアン・ブロディ。ニューヨーク在住の前衛画家にジェームス・フランコ

 

だが、今作で輝きを放っているのは、2人の存在感のある女優だろう。ローマのホームレスのジプシー=ロマ族のミステリアスな女性を演じたモラン・アティアスは、イスラエル出身の女優。さほど出演作は多くないが、ハギス作品『スリー・リバーズ』や、『クラッシュ』の題材をテレビドラマ化した『クラッシュ』に出演している。そして、今作で一番輝いているのは、ミラ・クニス(キュニスとも)だろうか。自身のある行動によって、窮地に立たされて精神が不安定になっている、観ているこっちがハラハラする程に、危うい行動をする元女優を見事に演じている。B級恋愛映画を経て、セス・マクファーレンのテレビ・アニメ『ファミリー・ガイ』(声の出演)、監督作品『TED』では主人公の彼女を演じた。コメディ女優のイメージがある(実際、コメディ顔)が、本作でその殻を破った。が、その後も何だかコメディ作品やアニメ中心にキャスティングされているのが勿体ない。最新作はラナ&アンディのウォシャウスキー姉弟による『ジュピター』の主要キャストを演じるようだ。コレにも期待。

 

ラストのどんでん返しばかり要求してしまう、昨今のミステリ映画ファンには少々物足りないかもしれないが、人間の奥深い感情を抑えたトーンで描いた秀作。心に余韻が残る作品だった。 

 

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アイルランドの良心、究極の3ピース・ギター・ポップの”どうしようもない”アルバムからの1曲は歌詞がサイコー。

”High Is Low” by The Frank And Walters

From The Album "TRAINS,BOATS AND PLANES"

 

Feltもそうだが、個人的には完璧に降参してしまうバンドの2コ目は、アイルランド出身のポールとナイアルのイナハン兄弟にドラムスのアシュレイ・キーティングを加えた3ピース・バンド、フランク&ウォルターズだ。実直な歌詞、実直なサウンド、実直なルックスを兼ね備えた、正にギター・ポップの良心を詰め込みまくったバンドである。

Frank And Walters 'Best Of'

(↑はベスト・アルバム”Best Of”ね) 

1992年のデビュー・アルバム"TRAINS,BOATS AND PLANES"の頃はNMEの表紙を飾る程の人気も評価も獲得したんだけど、後に人気は失速。しかし、常に良作をリリースしているバンドです。2013年にはこのアルバムの20周年記念スペシャルエディションが発売されている。

 

Trains Boats & Planes (20th Anniversary Edition)

(↑がアルバム"TRAINS,BOATS AND PLANES") 

変わらず実直な歌の世界が繰り広げられる作品をマイペースに、現在のところオリジナル・アルバムを6枚リリースしています。弟ナイアルの脱退、ベスト・アルバムやボックス・セットのリリース、ポールの頭が後退&腹は出る一方、インターバルは長いという、ある意味解散一直線的な活動でハラハラさせるんですが、まだまだ良い曲を"BAKE"してくれるんではないでしょうか。

 

この曲"High Is Low"は先のデビュー・アルバム”TRAINS,BOATS AND PLANES”のラストを飾る名曲中の名曲。このアルバムは全曲名曲なのでどれが...っていっても難しいのですが、本日の気分がコレだったんで。歌詞が好き。とにかくやってみればいいんだよ。

"Hight Is Low / Frank And Walters"より

高いものは低い
低いものは高い
君は何でもできる
飛ぶことさえも

手を伸ばして
空に触れてごらん
本当の自分を見つめ そこに近づこう
とにかくやってみるんだ 

 

Trains Boats & Planes (20th Anniversary Edition)

Trains Boats & Planes (20th Anniversary Edition)

 

 

 

 

映画やドラマやサッカー場で耳にする事が多いイギリス老若男女問わず愛されまくっている曲!

 

”I'm Gonna Be (500 Miles)" by The Proclaimers

From The Album "SUNSHINE ON LEITH"

 

昨日”いつもの”映画館に出かけた。チケットを求めた後の待ち時間には、休憩スペースに設置されたモニターで流れる予告編をチェックする。地方都市の単館系シアターであるためか、首都圏より遅れて公開される「ホドロフスキーのDUNE」でも流れないなか、と思っていると、ある映画に目が止まった。それが「サンシャイン/歌声の響く街」という映画だ。キャッチコピーによると、

英国大ヒットミュージカルの映画化!スコットランド版「マンマ・ミーア!」誕生!

80年代の名曲にのせて贈る、涙と喜びに溢れた家族と、彼らを取り巻く人々の感動の物語。名作『トレインスポッティング』が生まれた街を舞台に、同製作スタッフが再び結集。

Sunshine on Leith (the Motion Picture Soundtrack)

(「サンシャイン/歌声の響く街(Sunshine On Leith)」のサントラ)

なるほど、愛と感動のミュージカル・コメディらしい。普段僕が好む映画とは趣を異なっているのだが、何が気になったかというと、映画の原題"Sunshine On Leith”である。英国はスコットランドの町リースを舞台にした映画のため、当然と言えば当然なのだろうが、そのタイトルでピンと来た人は1980年代以降の英国音楽ファンであろう。

 

"Sunshine On Leith”とえば、リース出身のレイド兄弟(リード兄弟にあらず)によるデュオ・チームであるザ・プロクレイマーズが、1988年にリリースしたセカンド・アルバムだ。ここに”I'm Gonna Be (500 Miles)”という曲が収録されている。

 

Sunshine on Leith: Expanded Edition

 ("Sunshine On Leith" By The Proclaimers )

この曲は、後にジョニー・デップ主演の映画「妹の恋人」に使用されて世界的に有名になった曲だ。しかし、なぜか最近鑑賞した映画で度々耳にしている。名匠ケン・ローチ監督の「天使の分け前」や、エドガー・ライト監督作品に欠かせない存在のサイモン・ペッグ主演のジョン・ランディス監督「バーク アンド ヘア」などに使用されている。そして今回「サンシャイン/歌声の響く街」には、タイトルも含めて思い切りフィーチャーされている。

 

Angel's Share

(英国映画の巨匠監督最新作「天使の分け前」)

 

この曲は、老若男女問わずにイギリス人に愛されている。エディンバラスコットランド・リーグのサッカーチーム、ハイバーニアンのスタジアムでは度々流れ、サッカースコットランド代表のテーマ曲にもなっている。プロクレイマーズの木訥としたいい人キャラと、なんとも前向きな歌詞が共感を呼び、数多くのスコットランド~イギリス人に、前に進む勇気を与えているのであろ。かくいう僕も、この曲を聴くと凄く前向きな気分になれるのだ。

 

 

I'm Gonna Be (500 Miles)” by The Proclaimersより

And I would walk 500 miles.
And I would walk 500 more.
Just to be the man who walked 1000 miles,
To fall down at your door.

僕は500マイルだって歩いちゃうよ
そうさ500マイル以上だって平気だよ
1000マイルだって歩き通すよ
君のドアの前に倒れ込むくらい

 


一生懸命頑張っちゃうのさ

 

Sunshine on Leith

Sunshine on Leith