川の詩 (Poem Of The River)

音楽、映画、本といったカルチャーから些細な日常までをその日の気分で何となく

Creation Recordsを影で支えた黒幕的立役者の、長いキャリアの集大成的名曲と言えば...

”CRASHED ON YOU”  by  The Times

From The Album "E For Edward"

今回はエドワード”エド”・ボール大先生を登場させちゃった。思えば1970年代から活動しているんだよなあ。偉大なるミュージシャンであり、ソングライターであり、プロデューサーでもあった。彼の存在が無かったら、後のCreation Recordsの活動は確実に変わっていたでしょう。それだけ、英国インディ・シーンにとって重要な人物なのです。

 

Catholic Guilt

 

彼は英国ロンドンはチェルシーの出身です。まだ学生時代の1970年代後半にダン・トレイシーとのTelevision Personalities、それに並行して’O’ Level、自身のソロ・プロジェクトTeenage Filmstarsでも活動、その時代からマルチな活動を行っています。1980年代に入ってTVPから脱退したエドは、Teenage Filmstarsの進化形と言えるソロ・プロジェクトThe Timesをパーマネントなバンドと定めます。この頃はバンド形態で活動していましたが、エド以外のメンバーは流動的でした。Whaam! Recordsや、エド自身が立ち上げたレーベルArTpOp!から、カラフルでダークなサイケデリック・ポップの名作"Go! With The Times"、 "Pop Goes Art!"、 "This Is London"、"I Helped Patrick McGoohan Escape"といった諸作をリリースしています。どれもこれも白眉でございました。

エドの、また英国インディ・シーンの運命を大きく変える歴史的な出来事があったのは1986年の事。Creation Recordsのアラン・マッギーに誘われて、レーベルの運営に関わる事となります。以降、アランの片腕的存在であり、レーベルの影の黒幕として君臨し続けました。クレジットはされていませんが、アランのバンドBIFF BANG POW!のキーボードをはじめ、多様なユニットに参加しており、1990年代初頭のダンシング・クリエイション期に欠かせない存在となっています。

 

本業のThe Timesは、エドのパーソナルなユニットとなり、サウンドの方はアシッド・ハウスやダンス・ビートを取り入れるなど、あたかもCreationが変わっていくのを牽引するかの様にスタイルを変えていきました。Teenage Filmstarsも復活させてサイケデリックな実験サウンドを作り出し、ソロ名義ではアコースティックな弾き語り系のシンガー・ソングライター然とした作品を残しています。このソロ名義での作品は、彼の音楽人生の集大成的な優れた作品ばかりです。その辺はまたの機会にでも...。


さて、名曲は数えきれない位あるんで困っちゃいますが、一番好きな曲は...って考えるとこちら。通算10作目で、CREATIONからは2枚目となる1989年のアルバム『E FOR EDWARD』からの1曲です。このアルバムは、サイケデリック、バブルガム・ポップ、ニセっぽい映画音楽に、まだエッセンス程度ですがハウス的手法を取り入れ、雑多な音楽要素を統合して作品として作り上げられた、エドの才覚が満ち溢れた超傑作アルバムです。次作『Et Dieu Crea La Femme』では完全にハウス作品に移行していますので、サイケデリックなロック・アルバムとしては今作が最後と言えます。

 

E・フォー・エドワード


The Times - Crashed On You - YouTube

 

このアルバムの一番人気は、マンチェスターへの強力なアンセム『MANCHESTER』でしょうが、そして個人的なベスト・トラックはコレ!"Crashed On You"です。何と言っても、これまでのエドが関わって来た音楽作品の全ての要素が結実したかのような、彼流サイケデリック・ロックが展開する熱狂の楽曲です。とびきりクールでアシッディでクレイジーでメロディアスでロリポップで...とにかく、感動の1曲なのです。

 

1999年、みんなに衝撃を与えたCreationの倒産劇の後は、音楽家としてはレーベル契約をせず、ルクセンブルグ王ことサイモン・フィッシャー・ ターナーのドキュメンタリー・フィルム制作や、再結成したTVPに参加して活動しています。英国愛に溢れたサイケデリックでクールな天才的反逆のポップ・ メイカー&ロックン・ローラー。尊敬してます、マジで。 

E for Edward

E for Edward

 

 

E for Edward / Pure / Et Dieu Crea La Femme

E for Edward / Pure / Et Dieu Crea La Femme