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川の詩 (Poem Of The River)

音楽、映画、本といったカルチャーから些細な日常までをその日の気分で何となく

中庸的ネオ・ゴシック・バンドの隠れた名曲は、映画音楽の巨匠との異色のコラボ!

”T.V. MAN” by The Bolshoi

From The Album "Lindy's Party"

BauhausやSisters of Mercy、Christian DeathやThe Cult(Southern Death Cult)、Lords of the New Church、etc.etc.etc...と脈絡と繋がるポスト・パンクのダークな潮流は、異端のハズなのに、イギリスの人たちには今でも愛されているようだ。エドガー・ライト監督最新作の映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』で、サイモン・ペグが演じた主人公のゲイリー・キングは、ずっとSisters of MercyのTシャツを着て、あろうことかタトゥーまで入れている。思い切り気になっちゃった人も多いはずだよね。

 

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話は思い切り逸れたが、そのゴシック・ロック初期の次世代に当たるバンド(つまりネオ・ゴシックとか)のひとつと言えるのがThe Bolshoi。1984年にトレヴァー・タナー、ジャン・カリッキ、ニック・ジョウンの3人によってロンドンで結成されている。

 

Lindy's Party

 

英国インディー・レーベルの先駆けといっていいスティーヴォ率いるBeggars Banquetの一社員だったアイヴォ・ワッツ・ラッセルとピーター・ケントがBeggarsの資金援助を受けて設立したのが4ADで、ピーターが独立してBeggars傘下に設立したレーベルがSituation Twoだった。彼らはここからデビューした。同レーベルからリリースされたシングルはオリジナルよりもカヴァー(ジャック・ブレルやジミ・ヘンドリックス)の割合が多かったんで、コピー・バンド・レベルだったのに無理矢理デビューさせられた感がちょっとあった(失礼)。

 

数枚のシングルを経てデビュー・ミニ・アルバム"Giants"を完成させてプロ意識が格段に向上したか、ライヴにも意欲的に取り組んだ結果として見事に成長する。キーボーディストにポール・クラークを迎えて4人組となり、サウンド面でも厚みを増していった。1作目のフル・アルバム"Frineds"をリリースする頃には本家Beggars Banquetに昇格する。1987年に2枚目のアルバム"Lindy's Party"をリリースして一気に飛躍するが、3作目のアルバムのレコーディング中にレーベルとモメ、バンドは空中分解してしまった。このアルバムは”Country Life”と名づけられたが、結局の所はリリースされず、現在も幻となっている。

 

中世趣味でダークでエキセントリックな歌詞の世界観はイイのですが、ポップで洗練されたサウンドがアダになって中庸的なゴス・バンド扱いされてしまう微妙なポジションのバンドですが、タメとフックの効いた独特のエッセンスを持ったサウンド・メイキングとドラマティックで唐突な展開が印象的な素敵なバンドだった。典型的ゴス・ファッションや陶酔のヴォーカルを含まなかった、ある意味ゴス界の異端児でした。全員髪の毛は長かったけど、ファッションはサラリーマン系やアメカジ系とかだったから...。じゃあゴスじゃなくてフツーのバンドでも良かったじゃん!って気がしますが、レ-ベルの売り出し戦略がゴス路線だったんだろうなあ...。


今回は彼らの2枚目のアルバムで、事実上のラスト・アルバムとなった1987年度作品"Lindy's party"からの1曲。今作は見事に完成したバンド・サウンドが素晴らしい、会心の一作であった。卓越したメロディ・ライン、程良く気の抜けたヴォイス、サイドに徹しながらも突如として存在感を発揮するアコースティック&エレクトリック・ギター、本来の意味でヘヴィに鳴り響くベース、散りばめられたエレクトロニクスとホーンの響きも心地よく、何より厚みと深みを格段に増したドラマティックで洗練された展開のサウンドがお見事。程良い振幅を持ち、ちょいシアトリカルな部分もある(やっぱゴス系バンドのお里が...)緊迫感を湛えたサウンドの中に、一服の清涼剤の様に挿入される気の抜けた様な(←誉めてます)コーラスもいい味出していた。

 

この曲をバンドと共作したのは、何と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネと、007のテーマの著作訴訟でジョン・バリーに敗訴したモンティ・ノーマンなのだ。映像的なドラマティックな展開を聴かせるこの曲に、バンドの未来を見たものだけど、それは単なる夢だったんだなあ。アコースティック&エレクトリック・ギターとシンセの響きが絶妙に混ざり合った良曲だっただけに、惜しい事をしたなあ、と思うバンドだった...。

 


The Bolshoi - T.V. Man - YouTube

 

Giants

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Lindy's Party

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