川の詩 (Poem Of The River)

音楽、映画、本といったカルチャーから些細な日常までをその日の気分で何となく

生き残れなかったC86系バンド群の中でも指折りの名バンドの隠れた名曲は米国への視線を感じつつ味わう!

”Words On Power”  by Close Lobsters

(From "Headache Rhetoric") 

 

いつだって聴くと甘酸っぱい思いになってしまう曲ってあるでしょう。僕にとってはこの曲がソレ。特にヒモ付きの思い出があるわけじゃあないのにね...。

 

Headache Rhetoric

 

1986年にスコットランドはペイズリーという小さな村で結成された5人組バンド、クローズ・ロブスターズ。バンド名に特に意味は無いらしい。1986年に、英国で一番有名な音楽誌「NME」のオマケに、新人バンドばかりを集めたコンピレーション・カセット・テープ"C-86"が付いた。ここから一躍ちょっとしたムーヴメントが起こり、収録されたバンド群、PRIMAL SCREAMやPASTELS、WEDDING PRESENT、The Bodines、McCarthy等など...はC86系と呼ばれ、次々と人気バンドとなっていった。

 

クローズ・ロブスターズも"Fire Station Towers"という曲が収録されている。何とこのコンピレーションがリイシューされるってんだから、世の中は分からないものだ。 でも、ボーナス・トラックを追加したデラック・エディションって...。

C86 ?デラックス・エディション- (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

C86 ?デラックス・エディション- (直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

 

 中でも彼らは、口の悪いUKプレスをしても「C-86のハイプ(旬を過ぎるとこう言われてしまう)が無くても成功したであろう」と言われた程に完成されたバンドだった。ラッキーなデビューだが、やはりモノが違った。彼らといえば、1987年に発表されたデビュー・アルバム"Foxheads Stalk This Land"がまず来るでしょう。ネオ・サイケデリック系のバンドに触発されたという、繊細な響きを持ったアコースティックでジャングリーなテイストの2本のギターを中心に、ドコドコした小気味いいビート、甘酸っぱさいっぱいのヴォーカルとハーモニー、そして魅力的なメロディ・ライン。まさに完璧なアルバム。

 

しかし彼らは2枚のアルバムを残して解散してしまう。デビュー・アルバムの成功でイキオイに乗る彼らは、アメリカ進出をもくろみ、今回取り上げた曲”Words On Power”が入ったセカンド・アルバム"Headache Rhetoric"でアメリカ・デビューを果たす。しかし、かの地での所属レーベル"ENIGMA"の財政難により契約解除に見舞われた不運が災いしたのか、間もなく解散してしまう。来日の予定もあったが急遽中止するという、正に電撃解散だった。(どっかで聞いたような話だ...)。余談ですが、差し替えで来日したのはLA-DI-DA在籍の"HOW MANY BEANS MAKE FIVE"だった。コレもかなり貴重。

 

何でこの曲が切ないのかは未だに分からないけれど、Close Lobsters=Foxheadsとは思ってほしくないな、と思う。彼らが目指したアメリカはどういったものだったんだろう。当時の彼らの思いを考えながらこの曲を聴くと、何だかまた切なくなってしまうのでした。

 

Headache Rhetoric

Headache Rhetoric