川の詩 (Poem Of The River)

音楽、映画、本といったカルチャーから些細な日常までをその日の気分で何となく

ネオアコ史上最高のセンシティヴな名バンドによるメランコリックな名曲は、過去の仲間へのラブレター。

”Silver Plane”  by Felt

(From The Album "Poem Of The River") 

 

僕はFeltが好きだ。今まで生きて来た人生の中で、一番好きなバンドといっていい。ある意味「どうしようもない」バンドである。

 

Poem of the River

 

1979年の英国はバーミンガム近郊の町。熱狂的なトム・ヴァーレイン(The Television)マニアの青年、ローレンス・ヘイワードが自宅のベッド・ルームでたった一人でポータブル・カセット・レコーダーに吹き込んだ"Index"という曲から始まったFeltは、1980年にはギタリストのモーリス・ディーバングとドラマーのゲイリー・エインジを加えた3人組となり、繊細で冷淡なギター・サウンドと詩的な歌詞とメロディ、そしてトム・ヴァーレインの影響を強く受けた、呟くようなローレンスのヴォーカル・スタイルにより、神秘的な魅力を放出していた。10年の活動で10枚のシングルと10枚のアルバムを残して解散している。

 

そんなFeltの中で、一番「どうしようもない」曲がこの"Silver Plane"だ。1987年のリリース。彼らにとっては通算7作目のアルバムで、Creationに移籍してからは3枚目のアルバムとなる”Poem Of The River(邦題:川の詩)”から。Creation移籍を前後して、初期からバンドには不可欠となっていたシャープなギターを鳴らしていたモーリス・ディーバングが脱退してから、新参者キーボーディストのマーティン・ダフィ(現Primal Scream!)を中心としたインストゥルメンタル・アルバムなどをリリースして、傍から見たら混迷している様な気がしていた"Balld Of The Band"以降のCreation初期のFelt。そういったバンドの動きを(無責任にも、あるいは諦観して?)傍観していたローレンス(事実、インスト中心のアルバム群にはクレジットはあるが参加すらしていない)が、元々は彼がベッドルームでたったひとりで始めたバンド、Feltの行く末を思い、あまりにも重い腰を上げたアルバムとして、個人的には非常に重要なアルバム。その中でも、最もメランコリックな曲。ローレンスからマーティンへの擦り寄りとでもいうか、とにかく、後期Feltのあるべきサウンドが一番詰まったと思える曲だ。

 

ローレンス、モーリス共にシャープにトンガっていた初期Feltの楽曲はあまりにも素晴らしく、多くのFeltファンにとっては、いや、僕自身のとってもあまりにも魅力的だ。しかし、僕がFeltの中で一番好きな曲はコレなのだった。思えば25年以上も経過した現在でもソレは変わらないのが自分でも不思議だったり..。

 

この曲に関してローレンス自身が語った文献は当時も見当たらなかったので、果たして本人の意図かは分からないが、↓の歌詞が個人的には心に響くのだ。今でもね。

 

I Never Listened To You We Never Shared.

I Didn't Hear What You Said.

I Didn't Know What You Cared....

Two Years In This Little Room It's Going To Start Suffocation Me. 

 

僕は君の言う事に耳を貸さなかった(フリをした)。僕等に共通点など無かった。君が気にしていたのを知らないフリをした。でも、2年間この小さな部屋で過ごしたら、息が詰まりそうなんだ...。

 

これはロ-レンスからモーリスへの届く事のないラブレターだったのか?だからこそ、初期からのリスナーの心には響くのだろうか...。この曲によって違った展開があったとしたら、Feltはアルバム10枚+シングル10枚で終わるバンドでは無かったかも知れないな、とか思ってしまう。

 

初期Feltを、誰にも馴染めなかった高校時代にひとりぼっちでウォークマンで聴いていた時期を思い出した。やっぱり思い出は切なかった...。

 

Poem of the River

Poem of the River

 

 ※僕はYoutubeの動画を貼ったりはしません。形態はどうあれ、やっぱ買って聴いて味わってもらいたいという思いを込めて!悪しからず。